大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

仙台家庭裁判所 昭和31年(家イ)662号 審判

国籍

日本

住所

仙台市○○キヤンプ

申立人

山田ハンナ(仮名) 外一名

(法定代理人 母

山田良子(仮名))

国籍

アメリカ(ワシントン州)

住所

申立人に同じ

相手方

ウイリアム・ピカツト(仮名)

右当事者間の昭和三十一年(家イ)第六六二号、同第六六三号認知無効調停申立事件につき当裁判所は左の通り審判する。

主文

相手方が昭和参拾壱年四月○○日大阪府○○市長に届出た山田ハンナ、同山田アルバートに対する認知は無効とする。

理由

申立人は主文と同旨の調停を求めその実情として陳述した事情の要旨は、申立人は本籍大阪府○○市大字○○○○○○番地から昭和三十一年十一月○○日肩書本籍地に転籍した。申立人等は法定代理人母山田良子と某日本人との内縁中に出生したものであるが右法定代理人母は相手方アメリカ合衆国ウイリム・ピカツトと昭和参拾壱年四月○○日東京都に於て婚姻した。これと同時に申立人は母と共に相手方ウイアム・ピカツトと同居し生活している。そして申立人は昭和三十一年九月○○日法定代理人母の連れ子として相手方と養子縁組をなし、御庁昭和三十一年(家)第一五三五号、同一五三六号養子縁組許可申立事件につき御庁の許可を受けた。然る処法定代理人母及相手方養父は養子縁組届出に当り、不慣のため養子縁組許可証を出さず、名の変更許可書だけを出して○○市役所構内○○司法書士に届出書類の作成を依頼し、これに相手方及び法定代理人が署名捺印し本籍地戸籍係りへ郵送した。その後本籍地より戸籍謄本の下附を受け見分した処、養子縁組届出記載はなく昭和三十一年十月○○日受付で相手方が申立人が認知した届出となつて戸籍に登記されてある。申立人等は純然たる日本人であり、前記の如く相手方と養子縁組をして御庁の許可を受けた次第で、相手方が申立人を認知することはあり得ないのに、手続に不慣のため事実無根の認知が戸籍に登載されるに至つたのである。依て認知無効を求めるため調停の申立におよんだというのである。

相手方は申立の理由、事実を認め申立人と養子縁組が成立し、昭和三十一年九月二十一日御庁の許可を得たが届出手続不慣のため司法書士の作成指示した書類に署名し本籍へ提出したため、事実でない認知届となり過誤を起した始末である。申立人等は法定代理人母と某日本人間の内縁中に出生した日本人であり、認知する意思はなく申立人を相手方の子として認知することはあり得ない。従て申立人は法定代理人母と相手方間に出生した子でなく認知は無効であると述べ、尚その認知無効の原因について申立人と相手方間に事実がない旨の合意が成立した。

依て当裁判所は直に斎藤調査官に事実の調査を命じ報告を受けた上調停委員浅見公平同板橋登美の意見をきき、右当該合意に相当する審判をすることにした。そして同調査官の報告によれば、前記法定代理人山田良子及び相手方ウイリアム・ピカツトの両名は申立人と相手方間の養子縁組届出に当り、○○市役所内○○司法書士に当庁許可の名の変更書を示して入籍方書類の作成を依頼した処、名の変更許可決定の内容をよく見分せず、易く認知届書と名の変更届書を作成し右両人の署名を求め、本籍へ郵送手続をとつたため事実に相違する届出がなされ戸籍にその旨登録された経過と事情が明瞭となつた。要するに申立人は法定代理人母と某日本人間に出生した子であり、昭和三十一年九月二十一日当裁判所に於て法定代理人の連れ子として申立人と相手方の養子縁組を許可した事情は当裁判所に明かであり、相手方が申立人を認知する意思はなく又認知する筋合のものでないのに拘らず、相手方と法定代理人の手続不慣と司法書士の不注意(名の変更決定には当裁判所の養子縁組許可に基く事由が記載してあるので、書類をよく調査すれば直に内容が判るものである)により認知届がなされた経過、経緯が明かに認め得るので、相手方が昭和三十一年十月○○日本籍へ届出でた申立人等に対する認知は無効のものであるから、本件申立は正当の理由がある。依て家事審判法第二三条に則り主文の通り審判する。

(家事審判官 三森武雄)

申立の趣旨

相手方が申立人両名に対して為したる認知は無効であるとの調停を求める。

申立の趣旨の理由

一、相手方は昭和三一年一〇月○○日申立人両名を認知した。

二、次で親権を行う父として同日申立人両名の名の変更届出をした。

三、然るに相手方は申立人の実父ではない。それは昭和三一年九月二一日仙台家庭裁判所の相手方が申立人両名を養子とすることを許可する審判で明かである。

四、畢竟するに相手方は手続不案内の為前記養子縁組の届出を為すべきを誤つて認知の届出をしたるものである。

五、以上の次第であるから本調停中立に及んだ次第である。

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例